見たまんまの世界

【浅田家!】

写真家の浅田政志氏をモデルに創られたお話。

 

父の影響で写真を学んでいたけれど、何を撮ればいいかわからなくなった政志。

講師から出された【たった一枚の写真で自分を表現すること】という問いに、自分らしいことといえば家族だと思いつき、家族写真を撮り始める。

一生に1度しかシャッターを切れないとしたら?

 

そんな折、東日本大震災が起こり、写真洗浄のボランティアをしながら、自分に何ができるんだろうと考えるように。

 

自分が何をやりたいかは、自分の中にしかない。

考えて考えて、立ち止まって、政志は自分のやるべきことを見つけていく。

 

震災で被災した莉子は、お父さんの写真を探し続けているが、お父さんの写真だけ、なかなか見つからない。

けれど政志が自分たちを撮影する姿を見て、その理由に気付く。

お父さんが写った写真が無いのは、カメラで撮影していたからだ。

 

 

 

あぁ、確かに。

私の写真フォルダにも、子供たちの写真はたくさんあるけれど、自分が写っている写真は無い。(ときどき子供と自撮りするけど)

それが自分が見ている世界なんだなと納得。

 

めぐり合わせって面白い。

自分がやりたいことに迷っているとき、読んでみようかなって本に出会う。

いつもは目に入っていてもスルーしているのに。

まさに、全ては良い方向にしか進んでいかないっていうことなのだろうなぁ。

余命10年

【余命10年】小坂流加

現代の医療では治せない病になってしまったら、余命10年だと知ったら、自分はどう生きるだろうか?

 

私を含め、多くの人は、ただ命が続いていくことを疑っていない。

そして、気付いたとしても、明日には忘れてしまうのだ。

 

この物語は、余命を伝えられたことで人生を楽しむことを封印し、自分よりも周りの空気を優先させてしまう茉莉と、何事も器用にこなせるが故に何かに熱中すること、そして茶道の家元という血筋から逃げている和人の10年の物語だ。

作者は主人公と同じ病を患っている女性で、この刊行を待たずに逝去されているそう。小松菜奈と坂口健太郎主演の映画にもなっている。 

 

何度も涙をこらえながら読んでいた。

 

茉莉は、「死への準備を始めなければ」と、自分の死を和人に背負わせないために、恋人となった和人と別れることを決める。和人の幸せを最優先に祈りながら。 

やっと2人の想いが通じたのに、ハッピーエンドにはならない。

2人が近付けば近付くほどに、死ぬことに怯える。

 

たとえ余命が決まっていても、「その時」は突然訪れるかもしれないし、ゆっくりじわじわと忍び寄ってくるのかもしれない。誰にも分からない。

ひとりの病室で、死に対峙するのは本当にしんどいことだと想像する。「いっそのこと」と思うのも無理ないのだろう。

一時でも和人と恋をすることで、茉莉が自分自身に戻って、安らいで人生を楽しんでくれていたことが、せめてもの救いだ。 

 

想像することしかできないけれど、こういう世界があるのだな、などと平和な私は考える。