いきるわたしたち

【生きるぼくら】原田マハ

引きこもりの「人生」は、世話をしてくれていた母が突然いなくなったことから、外に出て、蓼科の祖母に会いに行く。

認知症の祖母の稲作への想いと、周りの大人たちの優しさから、長年祖母がこだわっていた自然農法での米作りに挑戦する。

 

実家は兼業農家だったので、もちろん現代の機械で田植えや稲刈りをやっていた。

でも自然相手の作業は本当に大変そうで。時期を見ながら、本業の調整もしなくちゃならないのだと思う。

今風の米作りでも大変なのに、おばあちゃんがやっていたのは昔むかしの自然のやり方。

それは、田んぼを耕さない、肥料を施さない、農薬を撒かない。おばあちゃんが、ご先祖さまがどれほど苦労してお米を作ったかを学んだ「自然の田んぼ」だ。

 

原田マハさんの小説らしくモチーフになった絵画(日本画)が出てくる。

東山魁夷の「緑響く」。

水面に緑の木々が反射していて、湖岸に白馬がいる風景は、教科書などで一度は見たことがあるのではないだろうか。

 

種籾から苗を育てて、田植え、日々のお世話、そして稲刈り。収穫したお米でおにぎりを作って母に食べてもらうために「人生」は母の元へ向かう。おばあちゃんの田んぼに帰ってくると約束して。

収穫後の藁は、また田んぼに戻され、土に還る。

「自然の田んぼ」の米作りは輪廻転生していく。

そして自分たちも、そんな自然の一部なんだと思えてくる。「いきるぼくら」

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